建設工事の種類と建設業許可申請の業種 ~ 全29業種の紹介 ~

この記事で分かること

建設工事の種類と建設業許可申請における許可業種の関係

建設業許可業種の全体像

建設業の業種 ― 建設業の許可には種類がある

建設業許可と一口にいいますが、実のところ、包括的に全ての種類の工事を請負うことのできる許可は存在しません。

建設業法では建設工事を種類別に分類しており、2021/11/1現在29種類の工事分類があります。この29種類の工事ごとに建設業の許可があり、この許可の区分のことを「建設業の種類」または「建設業の業種」と言います。従って建設業の許可も29種類(業種)ある、ということになります。

家の新築工事をイメージして頂くとわかりやすいと思いますが、家を一棟建てるためには様々な専門性をもつ業者さんが参加します。

工務店(ハウスメーカー)さん、基礎屋さん、大工さん、電気屋さん、屋根屋さん、内装屋さん、左官さん、建具屋さん、水道屋さん…。これらの業者さんの業務内容に合わせて建設業の許可の種類(業種)がある、ということです。

上記は建設系の工事についての説明ですが、当然、土木系の工事についても同様になります。

要る?要らない?建設業許可 ー「軽微な建設工事」500万円の壁

 

一式工事と専門工事

29種類の建設工事ですが、大きくわけて「一式工事」と「専門工事」の2つがあります。

一式工事

建築物の一棟建や、公共インフラ等土木工作物の本体工事を請け負う等、「総合的な企画、指導、調整のもとに」建築物や土木工作物を建設する工事のことを指します。

工事の種類としては「建築一式工事」「土木一式工事」。建設業の種類(業種)は、「建築工事業」「土木工事業」になります。

大規模事業者でいえばゼネコン、ハウスメーカー、中小規模でいえば地域の工務店さんをイメージして頂くとわかりやすいかと思いますが、戸建住宅の一棟建築工事や公共インフラの築造工事などの全体をプロデュースする工事が「一式工事」と考えてください。

専門技能を持つ複数の業者を指揮指導して建築物・工作物を完成させる仕事になりますから、一式工事を請け負うことができるのは、原則として、建築主(発注者・施主等)から直接工事を請け負う元請事業者に限られます。

一式工事に関して注意して頂きたいのは、「一式」とは言うものの関係するすべての工事を請け負うことを許可するものではないことです。

冒頭で「包括的に全ての種類の工事を請負うことのできる許可は存在しません。」と書きましたが、「建築工事業」「土木工事業」の許可を有していても、この後で説明する27の専門工事について許可が必要な工事を行う場合には、該当する業種の許可を取得する必要があります。

専門工事

簡単にまとめると「一式工事以外の工事」と理解して頂いて大丈夫です。

例えば、建設工事でいえば建物の屋根、建具、内装、付帯設備(電気・水道・ガス等)に関する工事、土木工事でいえば道路の舗装や用水路の浚渫等の工事等などを専門的に施工する工事のことです。

従って、一式工事の下請で工事を行う場合もあれば、建築主(発注者・施主等)から直接受注して元請として工事を行う場合もあります。

建設業法では、専門工事として全部で27種類が定められており、27業種の許可があります。

建設業の種類(業種)一覧

建設工事の種類と対応する建設業の業種名(許可業種)、具体的な工事例を紹介します。

建設工事の種類ごとについて、許可が必要な規模の工事を請け負うには対応する業種の許可を取得することが必要です。

なお、建設業法上の工事の種類や工事名称と、実際の工事現場で通例として使用される工事名は必ずしも一致しません。新規で許可を申請する際には、自社で施工する工事の内容がどの業種に該当するのかを申請先となる役所や行政書士に相談するようにお願いします。

(注)以下の説明は、国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」とその関連書類を参考・引用しています。また「工事」には、補修、改造、解体の工事を含みます。

参考・引用元:国土交通省WEBサイト

土木一式工事

業種:土木工事業

工事内容:総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事

建築一式工事

業種:建築工事業

工事内容:総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事

大工工事

業種:大工工事業

工事内容:木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事

工事例:大工工事、型枠工事、造作工事

左官工事

業種:左官工事業

工事内容:工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事

工事例:左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事

とび・土工・コンクリート工事

業種:とび・土木工事業

工事内容①:足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物のクレーン等による運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事

工事例①:とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事

 

工事内容②:くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事

工事例②:くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工

 

工事内容③ 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事

工事例③:土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事

 

工事内容④:コンクリートにより工作物を築造する工事

工事例④:コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事

 

工事内容⑤:その他基礎的ないしは準備的工事

工事例⑤:地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事

石工事

業種:石工事業

工事内容:石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事

工事例:石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事

屋根工事

業種:屋根工事業

工事内容:瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事

工事例:屋根ふき工事

電気工事

業種:電気工事業

工事内容:発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事

工事例:発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事

管工事

業種:管工事業

工事内容:冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事

工事例:冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更生工事

タイル・れんが・ブロック工事

業種:タイル・れんが・ブロック工事業

説明:れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事

工事例:コンクリートブロック積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、スレート張り工事、サイディング工事

鋼構造物工事

業種:鋼構造物工事業

工事内容:形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事

工事例:鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油、ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事

鉄筋工事

業種:鉄筋工事業

工事内容:棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事

工事例:鉄筋加工組立て工事、鉄筋継手工事

舗装工事

業種:舗装工事業

工事内容:道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事

工事例:アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事

しゆんせつ工事

工事内容:しゆんせつ工事業

工事例:河川、港湾等の水底をしゆんせつする工事

工事例:しゅんせつ工事

板金工事

業種:板金工事業

工事内容:金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事

工事例:板金加工取付け工事、建築板金工事

ガラス工事

業種:ガラス工事業

工事内容:金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事

工事例:ガラス加工取付け工事、ガラスフィルム工事

塗装工事

業種:塗装工事業

工事内容:塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事

工事例:塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事鋼構造物塗装工事、路面標示工事

防水工事

業種:防水工事業

工事内容:アスファルト、モルタル、シーリング材等によつて防水を行う工事

工事例:アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事

内装仕上工事

業種:内装仕上工事

工事内容:木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事

工事例:インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事

機械器具設置工事

業種:機械器具設置工事業

工事内容:機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事

工事例:プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事

熱絶縁工事

業種:熱絶縁工事業

工事内容:工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事

工事例:冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事

電気通信工事

業種:電気通信工事業

工事内容:有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事

工事例:有線電気通信設備工事、無線電気通信設備工事、データ通信設備工事、情報処理設備工事、情報収集設備工事、情報表示設備工事、放送機械設備工事、TV電波障害防除設備工事

造園工事

業種:造園工事業

工事内容:整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事

工事例:植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事、緑地育成工事

さく井工事

業種:さくせい工事業

工事内容:さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事

工事例:さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事

建具工事

業種:建具工事業

工事内容:工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事

工事例:金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事

水道施設工事

業種:水道施設工事業

工事内容:上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事

工事例:取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事

消防施設工事

業種:消防施設工事業

説明:火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事

工事例:屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事

清掃施設工事

業種:清掃施設工事業

説明:し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事

工事例:ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事

解体工事

業種:解体工事業

工事内容:工作物の解体を行う工事

工事例:工作物解体工事

建設業許可申請区分と業種の区分

建設業許可には、申請先(国土交通省か都道府県か)と工事規模(一般建設業・特定建設業)のふたつの申請区分があります。

この2つの申請区分それぞれに29業種あるので、全部で4×29=116通りの建設業許可が存在することになります。

建設業許可申請の構造

 

許可申請をする際は、下記の順序で必要な申請内容を決定していきます。

  • ①申請先の区分:営業所の配置により大臣許可申請か知事許可申請か決定する。
  • ②業種の区分:営業をしたい業種を決定する。
  • ③営業したい業種について請け負う予定の工事の規模(下請発注額)により一般建設業か特定建設業かを決定する。

許可業種と営業所

ここで注意して頂きたいのは、申請先の区分(大臣許可or知事許可)と工事規模の区分(一般建設業or特定建設業)は会社(事業者)単位で決定されますが、業種の区分は営業所単位で決定されるということです。

許可申請の際に各営業所で営業する工事業種を指定するのですが、例えば下記のような場合が考えられます。

許可業種と営業所

この例だと、ふたつの県にまたがって営業所があるので大臣許可。業種は、特定建設業の土木工事業ととび・土工工事業、一般建設業の舗装工事業と造園工事業で計4業種ですが、岐阜営業所で営業する業種は特定工事業のとび土工・工事業と一般工事業の舗装工事業の2業種となっています。

この場合に岐阜営業所で土木工事業と舗装工事業の営業を行うと、無許可営業になってしまいます。

付け加えると、その業種の許可のない営業所では「軽微な建設工事」を請け負うこともできませんので注意が必要です。

許可業種数は多い方がいいのか?

「岐阜営業所でも土木工事業と造園工事業の営業をするように申請すればいいじゃないか?」と考える方もいらっしゃると思いますが、許可申請においてポイントになるのは、建設業法上各営業所に必要となる技術者(専任技術者、監理技術者、主任技術者)の数になります。

営業所の専任技術者は勿論ですが、許可を取ることによって「軽微な工事」を含めて各工事の配置技術者を確保する必要が生じますので、営業所の受託案件数に応じた資格保有者・経験者を確保しなければなりません。

営業所でこの人材が確保できなければ許可を取得することはできない(または許可を取得しても請負契約ができない)ので、図のような事例はこのような場合に生じ得ます。

許可を取得する業種数に制限はありませんので条件(許可要件)さえ整えば全29業種の許可を取得することも可能ですが、状況によっては許可事業者に課せられる義務が営業上の制約となり、経営機会を逸するという可能性も無くはないのです。

営業所が一か所であればそれほど問題は生じないと思われますが、規模の大きい複数の営業拠点を持つ事業者様においては、会社としてどの業種の許可を取るのかについて顧客ニーズ等も踏まえた十分な検討が望ましいでしょう。

 

専任技術者等建設業許可の条件(要件)についてはこちらから。↓

建設業許可申請~許可取得7つの条件(許可要件)

建設業許可条件②-1営業所の「専任技術者」になれる資格一覧

 

申請業種数と申請手数料

とはいうものの、一般的に許認可申請の要件は難化していく傾向があるので、「許可は取ろうと思ったときに取ってしまった方が良い」ことも確かです。

申請手数料についても同じことが言え、①同じ役所に、②同じタイミング、③同じ種別(新規又は更新)の申請をする場合は申請業種数に関わらず同額になりますが、申請タイミングが異なるとその都度申請手数料が必要になります。

申請手数料の計算方法

表の事例は①新規申請のタイミングで2業種同時申請した場合と、②新規で1業種許可取得後約1年で業種追加申請をした場合の比較ですが、約6年間に支払う申請手数料の総額が2倍になってしまうことがわかります。

役所に申請書を提出するたびに所定の申請手数料や、行政書士に依頼する場合はその報酬も必要になることを考えると、できるだけ最初の申請時にとれる許可を全て取ってしまった方が直接的な出費という観点ではオトクと言えます。

※ある許可の更新のタイミングで複数業種の更新申請を同時にしてしまう「許可の一本化」という手法もあります。

 

申請手数料の支払方法・掛かる費用についてはこちらから。↓

建設業許可申請の手数料支払い方法-収入証紙と収入印紙

建設業許可申請にかかる費用とその内訳

まとめ

建設工事の種類ごとに建設業の許可があります。

自社の事業内容や将来構想を十分に検討して、許可取得も計画的・戦略的に行うとよいでしょう。

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