建設業許可申請~許可取得7つの条件(許可要件)

この記事でわかること

  • 建設業の許可を取得するための条件(許可要件)の全体像

建設業許可に必要な7つの条件(要件)

この記事をご覧の皆さんの多くは、おそらくこれから建設業の許可取得を希望されていることと思いますが、建設業の許可を取りたいと思ったとき最初にこう思われたのではないでしょうか?

  • 「わが社は許可が取れるのか?」
  • 「どうしたら許可が取れるのか」

建設業の「許可」ですので、当然、許可されるかどうかには条件が付きます。この許可の条件のことを「許可要件」と言いますので、この言葉は覚えておきましょう。

建設業許可の条件=「許可要件」=役所が許可をする基準

※この「許可要件」という言葉ですが、一般的な言葉ではないのでこの記事では「条件(要件)」と書くことにします。

建設業許可の条件(要件)は下記の7つです。

  • ①適正な経営体制であること(経営業務の管理責任者)
  • ②社会保険に加入していること
  • ③営業所の「専任技術者」がいること
  • ④建設業の営業に関して誠実であること(誠実性)
  • ⑤建設業の経営に必要な財産的基礎又は金銭的信用を有すること
  • ⑥法人、個人事業主、それらの役員等が欠格要件に該当していないこと
  • ⑦建設業のための営業所があること

この建設業の許可の条件(要件)ですが、それぞれの条件(要件)にさらに細かい論点がありますので、この記事では全体像をご紹介することとします。一つ一つの条件に付いては、別記事で詳しく書いていきますので、そちらを参照してください。

建設業法で定められていますので許可の条件(要件)そのものは全国共通ですが、申請書の書き方やその審査基準には申請先により細かな差異(ローカルルール)があります。

申請に際しては、申請先の役所が発行している「手引き」や申請窓口で必ず運用を確認してください。

※なお、この記事は愛知県の「建設業許可申請の手引き(申請手続編)」等を参考にしています。

参考:愛知県WEBサイト

【お断り】

法令に則った場合、厳密には、①~⑤までが建設業法とその関連法令で「許可の基準」として明記されたものになります。⑥は該当した場合に許可が出ない事情のこと、⑦は申請時に事実関係の確認をうける対象のことであって建設業法上の「許可の基準」ではありませんが、この記事では許可を受けるための必要事項として一般的な言葉の使い方の観点から「許可の条件(要件)」として扱います。

建設業許可申請の「手引き」とは? 入手方法と使い方

 

条件①:適正な経営体制であること(常勤役員等 / 経営業務の管理責任者)

建設業の許可を得ることにより、「軽微な建設工事」以外の工事も請け負うことができるようになります。

契約額面の大きな工事や公共工事を受注できるようになり、事業者としての社会的責任も増すので、経営陣に建設業許可事業者を営むにふさわしい経験や体制が求められると理解して頂くとわかりやすいかと思います。

この適正な経営体制を構築できるかどうかが、建設業許可を取得するための最大の難関です。

役員等の構成をどうするか、事業承継をどのように進めるか等、場合によっては複数年のスパンで検討して準備を進めていく必要があります。

この条件(要件)を満たすには、下記ABのふたつのパターンがあります。

パターンA:常勤役員等のうち1名が下記のいずれかに該当すること。

【常勤役員等】

法人:業務執行社員、取締役、指名委員会等設置会社の執行役、各種組合等の理事等のこと(法人の取締役会決議で具体的な権限委譲を受けた執行役員等を含む)

個人:個人事業主本人、支配人のこと

A-1:建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者

既に建設業に携わっている方であれば、「経管(けいかん)」という言葉を聞いたことがあると思います。

この「経管」、正式には「経営業務の管理責任者」と言います。

建設業許可を取得するための「適正な経営体制」の一つ目のパターンは、経営陣(常勤の役員等)のうちにこの「経管」経験者が含まれている場合です。

「経営業務の管理責任者としての経験」とは、建設業を営む事業者(法人、個人、組合等)の経営者、役員、理事等対外的な責任を有する立場で、建設業の経営について総合的に管理した経験のことです。

この「経管」として5年以上の経験を持つ方が必要になります。

A-2:建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者

「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者」ですが、カッコ書きの「経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る」がポイントです。

この要件は、いわゆる「執行役員」等の立場で建設業の経営に5年以上携わった経験のある方ということになります。

しかし、「執行役員」であれば何でもよいのかと言えばそうではありません。組織での役職の名称に関わらず、カッコ書きの部分、取締役会から建設業務に関する権限を付与されていたこと等を申請時に証明する必要があります。

愛知県の「建設業許可申請の手引」を例にすると、この「準ずる地位」で申請をする場合には事前相談するように指示があります。審査では、組織図、職務分掌や人事制度に関する社内規程、稟議書/決済書等の資料を提出する必要がありますので、ある程度の経営規模を持つ法人での経験がないと認められないと考えてください。

A-3:建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者

前述にA-2の場合と同じ「経営業務の管理責任者に準ずる地位」ですが、「経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る」という限定条件が付かず、「経営業務を管理した経験」ではなく「経営業務の管理責任者を補助する業務」の経験という表現になっています。

この「経営業務の管理責任者を補助する業務」ですが、資金の調達、技術者・作業者の管理、契約管理等の建設業の経営業務に全般的に関わった経験のことを指します。

「経営業務の管理責任者に準ずる地位で経営業務の管理責任者を補助する業務」に該当するケースで一番わかりやすい例は、個人事業主の跡継ぎの方になります。親が経営者で、息子さんが跡次ぎとして経営を取り仕切っているような場合をイメージしてください。

法人の場合では、例えば役員の下で業務を取り仕切る部長さんのような立場での経験になります

愛知県の「建設業許可申請の手引」では、この「補助経験」についても事前相談するように指示があり、先ほどの例のような個人事業主さんの息子さんであったとしても許可が認められるケースは相当限られます。個人事業主の許可事業者の方で、将来家族への事業承継を考えている方は、早めに申請窓口又は行政書士に相談することをおススメします。

法人の場合、「経管」でも「準ずる地位」でも無い経験での申請になりますのでハードルは更に高くなります。「法令上一応記載されてはいるけれども」くらいの理解に留めて頂くほうが無難です。

パターンB:会社として下記の体制を整えること。

常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であり、許可を申請する業者において財務管理業務経験5年以上の者、労務管理業務経験5年以上の者、業務運営業務経験5年以上有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。

  • 建設業について、二年以上役員等としての経験があり五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
  • 五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者

財務管理の業務経験:建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験

財務管理の経験:社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験

業務運営の経験:会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験

このパターンBですが、法改正により2021年(令和2年)から新たに追加された要件ですので、建設業に関わってきた皆さまでも馴染みが薄い方も多いのではないかと思います。

単独では常勤役員等(経営業務の管理責任者)と認めるだけの経験が不足しているけれども、その事業者内で建設業の重要な経営要素(財務・労務・業務運営)を経験してきた方が補佐することで会社全体として経営業務を管理する体制を認める、という趣旨とご理解頂くとわかりやすいかと思います。

「直接に補佐する」とは、他者を介することなく常勤役員等から直接に指揮命令を受ける立場のことを指します。「補佐」しなければいけませんので、当然、常勤であることも求められます。

財務・労務・業務運営について常勤役員等を補佐する方は同一人物でも大丈夫です。それぞれの経験についても重複して担当する職制にあった場合は、それぞれの経験期間としてカウントすることが認められます。

このケースが認められるかどうかは個々の会社の事情により異なりますので、愛知県の場合、申請前に事前相談するように指示があります。個々の事情での判断になりますので、この場合も申請時に組織図、職務分掌や人事制度に関する社内規程、稟議書/決済書等の資料を提出する必要があります。

建設業許可条件①適正な経営体制:常勤役員等/経営業務の管理責任者

 

条件②:社会保険に加入していること

前述①のパターンB同様、法改正により2021年(令和2年)から新たに追加された要件です。

国土交通省は建設業界の社会保険加入率の向上に力を入れてきましたが、同年の改正で許可の条件(要件)可されました。

法改正前は社会保険未加入であっても許可を取得することができましたが、現在は未加入業者は許可がとれなくなっています。

また法改正後は、未加入状態での更新もできなくなりました。

この条件(要件)の対象となるのは、社会保険(健康保険、厚生年金保険)、労働保険(雇用保険)です。

※法令で未加入が認められた場合を除きます。

建設業許可条件②「社会保険に加入していること」

条件③:営業所の「専任技術者」がいること

「専任技術者」とは、建設工事の専門的知識を持ち、請負契約の締結や履行を適正かつ確実に行うために各営業所に配置する技術者のことを言います。

「専任」とある通り各営業所に常勤することが必要です。

従って、他の営業所の「専任技術者」との兼務や、他社との兼業等は認められません。

同じ営業所に在籍していれば、「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」と兼務することはできます。

また、営業所の「専任技術者」は建設業の業種(許可業種)毎に必要になりますが、資格要件を満たしていれば一人で複数の業種の営業所の「専任技術者」になることができます。

なお、常勤役員等と異なり、職位・役職に関する制限はありません。「常勤」であれば一般社員でも営業所の専任技術者になることができます。

営業所の「専任技術者」になる条件

この営業所の「専任技術者」ですが、各営業所で請負契約に関わる技術的判断や計画通りに工事を施工させる責任を負う立場ですので、法令で就任条件が決められています

その条件ですが、①法定の資格所有者、②実務経験を有する者とされています。

【お断り】特定建設業に関して「大臣認定」という制度がありますが、本記事では省略します。

①資格保有者

許可業種ごとに営業所の「専任技術者」になるために必要な資格(公的資格・民間資格)が決められています。

資格によっては複数業種の「専任技術者」を兼ねることができ、例えば「1級建築施工管理技士」の資格取得者であれば、一般建設業、特定建設業両方の区分で「建築工事業」「大工工事業」「左官工事業」「とび・土工工事業」等全17業種の「専任技術者」になることができます。

従って社内に該当資格の保有者がいると許可取得のハードルが相当下がることになります。

とはいえ、主に技術系や施工管理系の資格が必要になるため、資格取得の難易度もそれなりに高いものになります。

なお一部の資格では、資格取得(合格)後に実務経験が必要となります。

建設業許可条件③-1営業所の「専任技術者」になれる資格一覧

 

②学歴+実務経験

資格保有者の他に、許可を取りたい建設業の業種に関する実務経験を持つ方も「専任技術者」になることができます。

必要な経験年数は学歴により異なり、下記の通りです。

高校/中等教育学校*の所定学科卒業 実務経験5年以上
大学/短大/高専/専門職大学(前期課程)の所定学科卒業・修了 実務経験3年以上
学歴不問 10年以上の実務経験
*中等教育学校=いわゆる中高一貫校のこと

実務経験の内容ですが、工事施工に直接関係する職務経験であれば大丈夫です。例えば見習工としての経験年数も含むことができますが、雑役のアルバイトとか、事務作業等は認められません。

所定学科は、許可を取りたい建設業の業種に関係する学科と考えてください。例えば「建築工事業」であれば「建築学又は都市工学に関する学科」、電気工事であれば「電気工学又は電気通信工学に関する学科」等が指定されています。

★特定建設業の場合

特定建設業の場合、一般建設業に比べて専任技術者に必要な実務経験が厳しくなり下記の両方を満たすことが必要です。

  1. 一般建設業についての専任技術者選任条件を満たしていること
  2. 許可を受けようとする建設業に関して、元請事業者において、請負金額税込4,500万円以上の工事について2年以上指導監督的な実務経験を有すること

「指導監督的実務経験」とは、工事現場監督等の立場で総合的に工事監督や技術指導を行った経験のことを指します。

なお、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種(「指定建設業」と言います)の場合は、実務経験で専任技術者になることはできません。①資格保有者の条件に該当する方を選任する必要がありますが、特定建設業の場合、級の区分がある資格については「1級」が必要となります。

建設業許可条件②-2営業所の専任技術者になるための実務経験

条件④:建設業の営業に関して誠実であること(誠実性)

法人、個人事業主とそれらの役員等が、顧客等との請負契約に関して「不正又は不誠実な行為」をするおそれが明らかでないことをいいます。

「不正又は不誠実な行為」が何か?ということがポイントですが、愛知県の「建設業許可申請の手引」では次のような説明がなされています。

「不正な行為」とは、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領、文書偽造等の法律に違反する行為をいい、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為をいいます。

引用:愛知県「建設業許可申請の手引き(申請手続編)」

申請者に「不正又は不誠実な行為」が確認された場合、許可されません。

条件⑤:建設業の経営に必要な財産的基礎又は金銭的信用を有すること

建設業の経営には、協力会社への支払い等で非常にたくさんのお金が必要で、かつ、工期が長期化する工事もありますから資金繰りも重要になります。

そのため、許可申請の時点で申請者に一定の資金力又は金融機関等からの融資を得る信用が要求されます。

当然ですが、特定建設業の方が厳しい条件となっています。

一般建設業の場合

下記のいずれかに該当すること。

  • 申請日の直前の決算において、自己資本が500万円以上であること
  • 500万円以上の資金を調達する能力を有すると認められること
  • 許可申請直前の5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること

特定建設業の場合

申請日の直前の決算において、下記の基準をすべて満たすこと

  • 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ自己資本の額が4,000万円以上であること

条件⑥:法人、個人事業主、それらの役員等が欠格要件に該当していないこと

「欠格要件」とは、役所が申請者に対して建設業許可できない条件のことです。

建設業の経営に関わる法人、個人事業主、それらの役員等の経営陣が下記に該当する場合、許可が認められません。

  • 破産して、復権していない
  • 建設業の許可を取り消され、取消日から5年経過していない
  • 建設業の営業停止命令期間が終わっていない
  • 建設業の営業禁止期間期間が終わっていない
  • 禁固以上の刑を受け、執行等の後5年経過していない
  • 建設業法で定めた法令に関して罰金以上の刑を受け、執行等の後5年経過していない
  • 暴力団関係者である
  • 精神機能障害等で建設業の経営に必要な意思決定等ができない
  • 暴力団関係者に事業が支配されている

※上記は建設業法の規定を要約したものです。

なお、欠格要件に該当してしまった場合、新規で許可が認められないだけでなく既に取得した許可も取り消されます。

条件⑦:建設業のための営業所があること

許可申請に際し、請負契約や施工管理、そのための事務作業や書類の保管を行うための営業所があるかどうかの確認をされます。

愛知県の場合は、申請の際に外観、入り口付近の営業所名の表示、室内の事務スペース(事務机、電話/FAX/PC等の様子)、更新申請の場合は建設業許可票(いわゆる「金看板」)の写真が求められます。

自宅と兼用でも、生活スペースとの区分が明確になっていれば大丈夫です。

愛知県の場合、通常現地確認はありませんが、許可時に郵送される許可通知書が営業所に届かず役所に返送された場合は別途調査が入ります。

また、他の都道府県の場合は愛知県と確認事項が違います。営業所に求められる条件が厳しいところもありますので、許可申請前に必ず申請の「手引き」や申請窓口で確認してください。

愛知県で建設業許可申請をする場合の問い合わせ窓口

愛知県内の事業者が建設業に関して問合せする際の窓口は下記ページに纏めました。

当ページと併せてご確認ください。

愛知県でする建設業許可申請ー役所管轄・窓口一覧

 

まとめ

建設業許可は、いくつもの条件(要件)をクリアしないと取得できません。

新たに許可を取りたいと思っても長期間にわたる準備が必要になる場合もあります。

常日頃から許可条件(要件)を意識した経営に取り組むと良いでしょう。

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