この記事でわかること
建設業の許可を取るために必要な費用とその内訳
費用についての考え方
建設業許可申請にかかる費用の内訳
建設業の許可を取りたいとおもったとき、やはり費用が気になりますよね。
許可を取るまでに必要な費用ですが、大きく分けると次の3つの種類の費用が必要になります。
- ①申請手数料(法定費用)
- ②その他の費用(必要経費)
- ③行政書士報酬
まず①「申請手数料」ですが、許可申請を提出する先の役所に支払うお金のことです。「審査料」と考えて頂くとわかりやすいかと思います。
次に②「その他の費用」は、申請するときに必要な書類を入手するときの発行手数料や、書類の送付のための郵便代金等の実費と考えてください。
最後③「行政書士報酬」は、建設業許可手続きを行政書士にお願いする場合に行政書士に支払う外注費になります。
建設業許可申請にかかる費用の総額は?
気になる総額ですが、次の計算でイメージしてください。
自社(自分)で手続する場合
自社(自分)で手続する場合 → ①申請手数料+②その他の費用
申請内容で額は変わってきますが、地場を中心に工事を行う中小企業様や個人事業主様が初めて許可を取る場合(知事許可×一般建設業×1業種)であれば約10万円といったところでしょうか。
自社(自分)で手続する場合は、見えない費用として人件費等の社内コストが掛かることも抑えておきましょう。
行政書士に依頼する場合
行政書士に依頼する場合 → ①申請手数料+②その他の経費+③行政書士報酬
先ほどの自社(自分)で申請する場合と同じ条件(知事許可×一般建設業×1業種)で、行政書士にお願いすると総額20万円から40万円くらいがボリュームゾーンになるかと思います。ずいぶん差があると感じられると思いますが、これは、行政書士ごとの報酬額の考え方の違い、お客様の状況、許可を取りたい業種の申請の難易度等の事情により大きく額が変動し得るからです。
この記事の後半で詳しく説明したいとおもいます。
申請手数料について
ここからは、建設業許可申請にかかる費用、内訳について詳しく見ていきましょう。
まず申請手数料ですが、先ほども書きましたが許可申請書を提出する際に役所に支払う「審査料」と考えて頂くとわかりやすいかと思います。許可申請をするすべての企業様、個人事業主様が必ず支払わなければいけない費用です。
許可申請をする際に役所の窓口に申請書類を持っていくのですが、そのときに一緒に支払い(納付)をします。
この申請手数料ですが、絶対に覚えておいてほしいことが1点あります。それは
「申請手数料は不許可時にも返還されない」
ということです。
申請書を提出した後に何らかの理由で不許可になった場合申請手数料は戻ってきませので、申請前に許可されるかどうかをきちんと精査することが非常に重要になってきます。
とはいえ、実際の手続きにおいては許可の見込みのない申請は窓口で受け付けてもらえませんので、それほど心配する必要はないかとおもいます。
申請手数料額
申請手数料は、許可区分と申請区分により決められており全国共通で次のとおりです。
- 新規:都道府県知事許可90,000円、国土交通大臣許可150,000円
- 更新:都道府県知事許可、国土交通大臣許可ともに50,000円
- 業種追加:都道府県知事許可、国土交通大臣許可ともに50,000円
新規申請の場合の都道府県知事許可と国土交通大臣許可で額が違いますが、そのほかのケースは同じです。
知事許可では一つの都道府県(例えば愛知県)内にすべての営業所がありますが、国土交通大臣許可では複数の都道府県(例えば愛知県と東京都)に営業所が存在しますので事業規模の大きさが申請手数料の違いになっている、とイメージしていただくとわかりやすいと思います。
なお、国土交通大臣許可の場合、新規申請時に支払う費用は正式には「登録免許税」と言います。
申請手数料の計算方法
建設業の許可申請ですが、必ずしも単純に新規、更新、業種追加に該当しない場合も多くありますので申請手数料の計算方法についても見ておきましょう。
少し複雑になりますので十分注意してください。
目で見て頂いたほうがわかりやすいかと思いますので、すべてのパターンを表にまとめてみました。この中から該当するパターンに合わせて申請手数料を用意して頂くことになります。
申請区分 | 許可区分 | ||
一般又は特定の一方のみ申請する場合 | 一般と特定の両方を申請する場合 | ||
新規 | 都道府県知事許可 | 90,000円 | 180,000円 |
国土交通大臣許可 | 150,000円 | 300,000円 | |
許可換え新規 | 90,000円 | 180,000円 | |
般・特新規 | 90,000円 | ― | |
業種追加 | 50,000円 | 100,000円 | |
更新 | 50,000円 | 100,000円 | |
般・特新規+業種追加 | ― | 140,000円 | |
般・特新規+更新 | ― | 140,000円 | |
業種追加+更新 | 100,000円 | ※150,000円又は200,000円 | |
般・特新規+業種追加+更新 | ― | 190,000円 | |
※一般又は特定の一方のみを追加+一般と特定の両方を更新する場合:150,000 円
※一般と特定の両方を追加+一般と特定の両方を更新する場合:200,000 円 |
参考資料:
愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)(令和3年4月)」https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/375379.pdf
中部地方整備局「建設業許可の手引き(令和3年1月)」https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/info/license/pdf/tebiki20210101.pdf
申請手数料の支払い方法
申請手数料の支払い方法ですが、申請先の役所ごとに違うので注意が必要です。
都道府県知事許可申請
愛知県の場合
愛知県内に本店のある会社、個人事業主様で、愛知県知事許可を申請する場合は「愛知県証紙」というものを申請書に貼り付けて支払い(納付)します。貼り付ける際の「消印」は不要です、というか消印してはダメなので注意してください。
間違いやすいのですが「収入証紙」と「収入印紙」は全く違うものです。
「愛知県収入証紙」は愛知県庁、各県民事務所、各警察署(安全協会)、各市役所等で購入できます(郵便局では買えません)。愛知県に関しては建設業許可申請先となるすべての役場内で販売していますので、申請時窓口の方の書類確認後に提出OKということになってから購入することをおススメします。各販売窓口の受付時間についても事前に確認しておくとよいでしょう。
【注記】2021/9/1時点での運用として、愛知県ではコロナ感染予防のため、郵送での仮受付後申請書類の確認を経てから後日窓口に出向いて本受付をする運用となっています。申請手数料は、本受付時に愛知県証紙を窓口に持参して申請書に貼り付けることになっています。郵送時に貼り付けないようにしましょう。
他の都道府県の場合
愛知県同様各県の収入証紙で支払うところ、現金等他の方法で支払うのところと運用が分かれていますので、各都道府県の建設業許可の手引きや担当部署のWEBサイト、窓口への電話等で支払い方法を確認してください。
申請先となる役場と同じ場所で販売していないところもありますので、どこで売っているかも必ず確認しましょう。この場合は、収入証紙の売りさばき所(販売所)として地場の金融機関等が指定されていますので、事前に購入して申請時に持参することになります。
国土交通大臣許可申請の場合
国土交通大臣に許可申請をする場合は、新規の場合と更新の場合で取り扱いが違うので注意が必要です。
新規申請
国土交通大臣に許可申請をする場合の申請手数料は、正確には「登録免許税」といいます。
- 支払先
本社を管轄する国土交通省の地方整備局が指定する税務署
- 支払い(納付)方法
税務署の窓口で直接支払い、又は、日本銀行・日本銀行歳入代理店・ゆうちょ銀行から指定税務署あてに納入(振込)
このうち「日本銀行歳入代理店」は最寄りの”銀行”か”信用金庫”と考えてください。愛知県に本店を置く企業様・個人事業主様を例にすると、「中部地方整備局」が指定する「名古屋中税務署」に出向いて直接支払うか、取引先の銀行・信用金庫に納入を依頼することになります。
納入した際の領収書の原本を申請書に貼り付けて提出しますので、領収書を無くさないようにしてください。
更新申請
新規申請の場合と比べると、更新申請の場合は単純です。
郵便局で「収入印紙」を購入して、申請書に貼り付けて提出するだけです。注意点としては「消印」をしないこと。申請用紙に貼り付けるだけにしてください。
「許可の一本化」について
「許可の一本化」とは、許可日付が違う複数業種の許可をある業種の更新のタイミングでまとめて更新申請してしまう制度です。
同じ役所に提出する更新申請の許可区分(一般建設業か特定建設業か)が同じであれば、何業種同時に申請しても、申請手数料は同額の5万円です。
この制度を使って異なる許可日付の複数業種の更新を同時に行ってしまえば、申請手数料は5万円で済みます。
後から更新日を迎える許可を前倒しして更新することになりますので残り期間はムダにはなってしまいますが、更新費用は削減できますので費用の面ではおトクといえます。
変更届に手数料はかかるのか?
許可を取得後には毎事業年度の決算についての事業年度終了届(決算変更届)のほか、役員変更等があった際に変更届を提出する必要がありますが、この変更届にも手数料はかかるのでしょうか?
結論から言えば、届出の場合は手数料はかかりません。
書類を提出するだけで大丈夫です。
その他の費用(必要経費)について
ここからは申請手数料以外の必要経費について見ていきます。いわゆる「実費」ですね。
必要書類の取得費用
申請や届出に際しては、書面の記載内容が事実であることを証明するための書類を添付しますので、これらの書類の取得費用が必要です。
主な書類の取得費用(発行手数料:2021/8/29時点)を表にまとめてみました。
書類 | 発行手数料の例 | 備考 |
住民票 | 300円/1名 | 名古屋市の場合 |
戸籍全部事項証明書 | 450円/1世帯 | 名古屋市の場合 |
身元(身分)証明書 | 300円/1名 | 名古屋市の場合 |
所得証明書 | 300円/1年度/1名 | 名古屋市の場合 |
登記されていないことの証明書 | 300円/1名 | 東京法務局後見登録課、
全国の法務局・地方法務局の本局の戸籍課 |
預金残高証明書 | 770円 | 三菱UFJ銀行の場合 |
各市町村が発行する書類は、各市町村で手数料が異なります。書類が必要な方の住所地・本籍地で確認しましょう。
またこれらの書類は、役員、大株主、常勤役員等(経営業務の管理責任者)、専任技術者、その他書類の提出が必要な方の全員分用意しなければなりません。1枚あたりではたいしたことないように思えても、役員数や株主数の多い企業様では結構馬鹿になりません。
郵送費用
必要書類の取得費用の他には、書類の郵送費用が必要になります。
申請は申請をする役所の窓口に直接訪問して行うことが基本ですが、コロナ禍により多くの役所で郵送での(仮)受付を行っています。
申請書や添付書類には個人や企業の機密・秘密情報が含まれていますので、役所の窓口に確実に到達する方法で郵送する必要があります。一般的には、レターパックプラス(赤)の利用がおススメです(役所によっては、郵送方法が指定されている場合もあります)。レターパックプラスは、1通520円です。
必要書類の取得は役所等の窓口で行いますが、郵送でも受け付けています。通常であれば、長径三号の封筒で往復普通郵便でよいでしょう。
行政書士報酬について
そもそも論ですが、建設業許可申請を代行できるのは「行政書士」だけなので注意してください。他士業、例えば税理士さん(等)でも受任されている方はいますが、その場合は行政書士を兼任されているはずです。依頼する前に「行政書士登録」を行っているかを確認してください。
行政書士に依頼する場合の相場
日本行政書士連合会が5年に1度調査している報酬額統計の結果からピックアップしてみました。
区分・種類 | 平均 | |
個人事業主(知事許可) | 新規 | ¥120,458 |
更新 | ¥64,841 | |
法人(知事許可) | 新規 | ¥137,618 |
更新 | ¥74,753 | |
業種追加 | ¥74,039 | |
事業年度終了届 | ¥39,505 |
引用:日本行政書士連合会「令和2年度報酬額統計調査の結果」
この調査に強制力はなく回答は任意です。回答数も必ずしも多くありません。従って、一つの目安にはなるかと思いますがあくまで参考程度とご理解ください。
平均値の他に”最頻値”も公表されており、例えば新規申請の個人事業主の場合で100,000円、法人の場合で150,000円。更新申請の個人事業主の場合が55,000円、法人の場合も同じ55,000円となっています。
筆者の感覚としては、実際の相場は、調査結果よりも高値側に寄ると感じます。普通難度の知事許可・新規の申請の場合で総額15万円~(税別)、更新の場合で総額8万円~(税別)といったところではないでしょうか。新規の場合は調査結果の最頻値に近いですが、更新の場合は3割ほど高い感じですね。
ちなみに上記の調査結果のうちで、最も高い回答は新規で345,600円、更新900,000円です。反対にインターネット検索で建設業許可の行政書士報酬額に絞って検索すると、相当安い価格も見受けられます。個々の回答の背景となる事情や値付けの条件も分かりませんし、地域による差もありますので、行政書士報酬額の相場といっても結局のところ一概には言えないというのが正直なところです。
行政書士報酬の仕組み
行政書士に頼んだ場合の報酬額は行政書士によって異なるのですが、なぜこのような差が生じるのでしょうか?
まずご理解頂きたいのは、行政書士を含む士業も自由競争であるということです。どのような価格をつけるかは各事務所の自由。安くつける戦略も、高くつける戦略も、両方あり得ます。近年は特にインターネットを使った集客が主流になっていますので、価格競争の傾向が強くなっているようです。
お客様からすれば「安い方が良い!」これは当たりまえ。
とはいえ、考えて頂きたいのは「お客様が行政書士に求めているものは何か?」ということです。
お客様が欲しいものは「建設業許可」であり、その許可を確実に維持するためのサービスであるはずです。許可の有無は経営を左右する一大事ですから、信頼に足る業者を選択することが望ましいといえます。
もちろん価格はその一つの目役ではありますので、参考までに報酬額の見方(考え方)を簡単にご紹介しましょう。
価格に直接的に含まれるサービス
別の言い方をすると「コミコミ」か「オプション別」かということです。
例えば同じ「建設業新規申請:報酬額15万円」でも「申請書類の作成だけ」なのか「すべての必要書類の取得代行も含む申請丸ごとパック」とか「次回更新時のお知らせサービス」が付いているとかではサービスの範囲が全く異なりますよね。
また、おもてむき同じ「建設業新規申請:報酬額15万円」でも、実際の作業工数に関わらず最終支払額として確定した価格なのか、それとも実工数に応じて最終価格が変動するのかでは大きな違いが出てきます。
単純に価格だけを見るのではなく、価格についた条件を必ず確認するようにしましょう。
価格に間接的に含まれるサービス
先ほども書きましたが、行政書士を含む士業も営利事業です。
お客様へのサービスから利益を得て、事業を維持し、成長させる必要があります。また、よりよいサービスを提供するためには、決して安くないコストが掛かります。
例えば、お客様の大切な情報や書類等をお預かりするためには、堅牢な事務所、セコム等の防犯対策、情報セキュリティ、社員の確保/教育/保険加入等も必要になります。ほかには、たとえばこのサイトのようにお客様とのコミュニケーション・情報提供のためのコストなどもかかります。法改正情報などのお知らせを、手紙やメールで行っている事務所もたくさんあります。
これらのサービスも見えないコストとして、報酬額には含まれてきます。
見積りを取ろう
実際のところ、案件に掛かる作業工数は会社の規模や申請の難易度等、個々のお客様の事情によって相当異なります。
実工数に関わらず単一料金を設定している事務所もありますが、ケースによって報酬額を変える事務所の方が主流でしょう。そのため、インターネットで見つかる報酬額表は「参考価格」とか「○○円~」のように幅を持たせた表示になっています。
ですので、依頼する前に見積書を取ることをおススメします。
ちゃんとした事務所であれば必ず応じてくれます。見積書の内容を見て、事務所の体制等も含めて価格に含まれるサービスがお客様のニーズに見合ったものであるかどうかをしっかりと確認しましょう。
まとめ
建設業許可申請には、決して安くない費用・コストが掛かります。
許可取得後に継続的に必要となる維持コストも考える必要がありますので、経営計画や年度予算に計上して、ムダなく運用していきましょう。