目次
この記事で分かること
工事受注金額(請負金額)と建設業許可の関係
許可の要らない「軽微な建設工事」の考え方
建設業許可が必要な場合、要らない場合
業界の外から建設業という産業を見た場合に不思議に思われるのは、「許可のある業者と許可のない業者」の両方がいることです。
許可なく建設業を営んでいるからといって違法業者かといえば決してそうではないことは建設業界の方は当然ご存じなのですが、同じ仕事をしていても許可のある業者と許可のない業者がいるというのは考えてみれば不思議ですよね。
この記事をご覧の方の多くは、「建設業 許可 500万円」等のキーワードの検索結果からご訪問頂いたと思いますので、最初に結論から書いてしまいましょう。
簡単にいうと、建設業許可が必要となるのは(建築一式工事以外で)1件の請負金額が500万円以上となる工事を受注したい場合です。
逆に言えば、(建築一式工事以外で)請負金額が500万円未満の工事のみを受注するのであれば、建設業の許可は不要です。
「500万円」という額が注目されがちですが、カッコ書きの(建築一式工事以外で)と書いた通り、建築一式工事の場合は扱いが異なりますので次も併せて覚えてください。
建築一式工事の場合は、1件の請負金額1,500万円以上&延べ面積150㎡以上の木造住宅工事を受注する場合に許可が必要になります。
建設業許可の原則と例外(「軽微な建設工事」)
ここで一度、建設業許可の前提となる建設業法を見ておきましょう。
法律上の原則としては許可が必要
実のところ、建設業法上の理屈では、建設業を営もうとする者は原則として許可を受けなければならないとされています。
建設業を営もうとする者は、(中略)二以上の都道府県の区域内に営業所(中略)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
建設業法第3条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=324AC0000000100_20201001_501AC0000000030
ポイントはマーカーで色付けした「ただし」以降で、原則に対する例外を定めています。
ここでは、原則としては許可が必要だけれども、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は例外的に許可が不要ということを言っています。
つまり「500万円以上の工事をする場合には許可が必要」という言い方は、実のところ法律を逆手に取った読み方ということになるわけです。
さらに建設業法では、許可のあるなしで業者の呼び方を区別しており許可のある業者だけを「建設業者」としています。
図に表した通り広い意味での「建設業を営むもの」のうち、建設業許可を持っている業者だけを法律上の「建設業者」と呼んでいるわけです。一般的な感覚とは異なりますが、深く考えず、法令とは”そんなもの”と理解して頂くほうがよいでしょう。
なお、この記事では、許可業者のみを「建設業者」、「建設業を営むもの」のうち許可のない業者を「許可のない業者」、許可のある業者とない業者の両方を意味するときは「建設業を営むもの」と記載して使い分けしています。少しややこしいですが注意して読んでみてください。
「軽微な建設工事」とは
それでは、建設業の許可が無くても請け負うことのできる「軽微な建設工事」についてもう少し詳しく見ていきましょう。現在建設業許可のない業者の方は、これまでの請負契約が建設業法違反になっていないか確認しながら読んで頂ければと思います。
(前略)軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が500万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、1,500万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。
建設業法施行令第1条の2
これをまとめると「軽微な建設工事」は下記のいずれかに該当する場合になります。
- ①建築一式工事で、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事
- ②建築一式工事で、延面積150㎡未満の木造住宅工事
- ③建築一式以外の工事で、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
上記①~③のいずれかに該当する場合が「軽微な工事」となります。
”いずれかに該当する場合”ですので、建築一式工事であれば、例えば請負金額3,000万円の工事であっても同時に延面積が100㎡の木造住宅工事であれば「軽微な工事」に該当するということですね。
【参考】「木造住宅」の定義
「木造」=建築基準法第2条第5号に定める主要構造部が木造であるもの
「住宅」=住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で、延べ面積が2分の1以上を居住の用に供するもの
引用:国土交通省WEBサイト
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html
「軽微な建設工事」の判断のポイント
税込みか税別か?
結論は「税込み」です。
消費税、地方消費税込みで500万円(建築一式工事の場合1,500万円)以上の場合は軽微な工事に該当せず、許可が必要となります。
注文者(施主・元請業者等)から建築材料が提供された場合
自分で手配するのではなく注文者が用意した材料を使って工事を行う場合は、用意された材料の市場価格か、市場価格と運送賃を合算した額を、契約上の請負代金の額に加算して計算しなければなりません。
例えば工事請負契約書の額面が400万円でも、別途200万円分の材料を提供された場合は合計600万円となり建設業の許可が必要、ということになります。
契約書を分割してもよいか?
例えば600万円で請け負った工事の契約書を額面300万円の契約書2枚に分割するような行為ですが、これは原則としてNGです。
両方の契約書の合算額で判断されます。
法令上「正当な理由がある場合」は例外的に認められることに一応はなっています。建設業法の制限逃れではないことを証明できる程度の理由が必要になりますが、あくまで例外ですので、通常の商行為の範疇で認められるケースは無いと考えたほうが良いでしょう。
許可が必要な工事を無許可で契約してしまったら…
罰則
「軽微な建設工事」以外の工事、つまり許可が必要な工事を無許可にもかかわらず契約してしまった場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金などの罰則の対象となり得ます。
【参照】建設業法第四十七条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=324AC0000000100_20201001_501AC0000000030
さらには、この罰則を受けることにより建設業法上の欠格要件に該当してしまい、以後5年間許可を取ることができません。
工事契約の際には安易に考えることなく、受注額には細心の注意を払うことが肝心です。
許可が必要なタイミング
先ほど「軽微な工事以外の工事を無許可で“契約”してしまった場合」と書きましたが、建設業の許可は、「軽微な建設工事」以外の工事(許可が必要な工事)の請負契約を結ぶ時点で必要になります。
工事を実際に開始するとき(施工開始時)等ではないので注意しましょう。
発注者側の場合の下請業者の許可の有無
「軽微な建設工事」以外の工事を他社に外注する場合は、その工事の発注先となる下請業者も建設業の許可が必要になります。
許可のない業者に発注してしまった場合、発注側にも営業停止7日以上の罰則が適用されますので協力会社の許可の有無についてもしっかり把握しておく必要があります。
【参照】建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000179.html
建設業許可を取る前に無許可営業をしていた場合は…
この記事を読んでいる方には当然これから建設業の許可を取りたいという業者の方が少なくないと思います。
その中にはこのような方もいらっしゃることでしょう。
- 「請負金額500万以上の工事を請け負ってしまっていた」
- 「軽微な建設工事だと思っていたが、実はそうではなかったようだ」
このような場合に、新規に許可を取ることはできるのでしょうか?
結論から言うと、その法人、個人事業主、役員等の方が過去五年以内に無許可営業による罰金等の罰則を受けたことが無く、欠格要件に該当していなければ許可は取れます。
愛知県の知事許可申請の場合を例にすると、新規許可申請時に「顛末書」を添付することにより申請書を受け付けてくれます。
もちろん褒められたことではありませんが、無許可であったことを反省して許可業者として法令をきちんと守ることを約束すれば許可は(一応)取れるということですね。
ですから、申請時に提出する工事経歴書には、無許可で受注していたからと言って該当する工事の実績を隠すようなことなく、正直に書いてください。(注)そもそも隠すような行為自体、虚偽申請に該当します。
愛知県以外の場合も門前払いされるようなことはありませんが、手続きや許可時の取扱いが異なります。申請先となる窓口に事前に正直に相談しましょう。
建設業許可の条件(要件)
建設業許可の条件(要件)については下記ページに纏めました。
当ページと併せてご確認ください。
まとめ
建設業の許可は、「軽微な建設工事」以外の工事を受注する場合に必要となります。
「軽微な建設工事」であれば許可は不要ですが、「軽微な建設工事」に該当するのかどうかを請負契約時に正しく判断し、無許可営業とならないように注意しましょう。