建設業許可条件③-2営業所の専任技術者になるための実務経験

この記事でわかること

営業所の専任技術者になるために必要な実務経験の概要

実務経験を証明するために必要なこと

【注】この記事は、愛知県知事許可申請の場合について記載したものです。他の行政庁への申請については、一切考慮しておりません。

営業所の専任技術者になるための要件

建設業許可を取得するためには、建設業を営む営業所ごとに、建設工事の専門的知識を持ち、請負契約の締結や履行を適正かつ確実に行うための「専任技術者」を配置しなければなりません。

この営業所の専任技術者になるための条件(要件)ですが、大きく分けて下記の2種類になります。

  1. 指定された資格を有すること
  2. 学歴+実務経験

この記事では、2.の学歴+実務経験について説明していきます。

1.については下記の記事で纏めましたので、この記事と併せてご確認ください。

建設業許可条件③-1営業所の「専任技術者」になれる資格一覧

なお、当サイトでは他の技術者制度との混同を避けるために、文中ではできる限り「営業所の専任技術者」という表現を使用しております。

一般建設業の営業所の専任技術者になるために必要な実務経験

まず最初に、一般建設業の営業所の専任技術者について考えていきましょう。

ここでいう実務経験とは、どのような経験を言うのでしょうか?

実務経験とは?

「実務の経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、ただ単に建設工事の雑務のみの経験年数は含まれないが、建設工事の発注に当たって設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験、土工及びその見習いに従事した経験等も含めて取り扱うものとする。

引用:「建設業許可事務ガイドラインについて」(令和3年12月9日国不建第361号)

申請で認められる実務経験

実際に経験した建設工事の業種の経験に限られます。たとえば、内装工事業の営業所の専任技術者になりたい場合は、内装工事業に関して必要年数分の経験が必要です。

経験内容については、“技術上のすべての職務経験”が認められます。文字通り、実際になんらかの建築・土木技術に関わる立場で工事施工に関わった経験であれば大丈夫です。

例えば、中学卒業してすぐに地域の建設業を営む業者に就職したような場合、一人前になるまでは見習いとして先輩について作業することになりますが、このような期間についても営業所の専任技術者になるための経験として認められます。

どこかの会社の社員や、個人事業主の弟子として雇われた立場でなくても大丈夫です。

左官等の職人(一人親方)として、他社から専門工事を請け負った経験も認められます。

申請で認められない実務経験

“技術上のすべての職務経験”ですので、技術的な要素の無い業務では実務経験として認められません

例えば建設工事の現場で働いていたとしても、掃除や交通整理等の施工に関わらない雑務や、現場事務所の事務員として働いたような場合は、営業所の専任技術者になるための経験としては認められません。

また建設工事の現場で働いていたとしても、アルバイト等非正規雇用で働いていたような場合も、営業所の専任技術者になるための経験としては認められませんので注意しましょう。

必要な実務経験年数

一般建設業の営業所の専任技術者になるために必要な実務経験年数ですが、その人の最終学歴によって異なります。

  • 高等学校若しくは中等教育学校の所定学科卒業:5年以上
  • 大学(短大)、高等専門学校の所定学科卒業:3年以上
  • 専門職大学前期課程の所定学科修了:3年以上
  • 学歴不問:10年以上

※「中等教育学校」は、中学校ではなくていわゆる中高一貫校です。

所定学科とあるように、許可を取りたい建設業の業種に関係する学科が指定されています

例えば「とび・土工工事業」の場合は「土木工学又は建築学に関する学科」になります。

申請の際は学歴を証明する書類として卒業証書のコピー等を提出しますが、学部学科の呼び方は教育機関により異なりますので、名称だけでは指定学科かどうか判断が付かない場合もあります。

このような場合には、必ず事前に申請窓口となる役所に相談しましょう。

成績証明書等、取得した単位を証明する書類が追加で求められることもありますので、卒業した大学・学校等に問い合わせてください。

所定学科一覧は記事の最後に纏めてありますのでご確認ください。→ こちら

なお、実務経験年数の計算方法(証明方法)は申請先で異なりますので、必ず申請の手引きや申請窓口で確認しましょう。(愛知県知事許可の例を後記します。)

実務経験証明書の書き方(愛知県知事許可申請の場合)

建設業の許可申請の際には、営業所の専任技術者になる方が必要な実務経験年数があることを証明しなければなりません。

「実務経験証明書」という書類を作成して、経験を積んだ当時の会社の社長さんなどに証明してもらう必要があります。

この「実務経験証明書」については、実務経験年数の計算の仕方、経験の証明方法は申請先によって異なりますので注意が必要です。

ここでは愛知県知事許可申請の場合の、「実務経験証明書」の書き方を紹介します。

必要な工事実績件数

実務経験年数の証明に必要な工事実績は、下記の計算に寄ります。

愛知県知事許可申請の場合:1年(1月~12月)あたり1件×必要年数分

1月~12月の1年間に1件の工事実績があれば、その1年分の実務経験が認められることになります。

必要な年数については、この後の「実務経験年数の計算方法」を参考にしてください。

学歴不問+10年経験で申請する場合でも、単純に10年だから10件記載すればよい、とはなりません。

なお、転職等の理由で、1つの企業の経験で必要年数分の証明ができない場合は、複数の企業の経験を足して申請しても大丈夫です。この場合は、証明をしてもらう先毎に、複数枚の「実務経験証明書」を作ることになります。

必要な実務経験年数の計算方法(証明方法)

一つの事業所で一つの種類の建設工事のみに関わっていた場合は、工事に関わった年数をそのまま実務経験年数として計上できます。

A事業所で10年間大工としてのみ働いたのであれば、A事業所での大工工事に関する実務経験年数は10年、ということになります。

一方、同じ期間に複数の業種の工事を担当していたような場合は、注意が必要です。

たとえば、10年間勤務したB会社で屋根工事と板金工事の両方の作業者として働いていたような場合です。

このB会社での屋根工事の実務経験として認められる年数が何年になるのかが問題になりますが、このような場合、同じ期間に経験した複数の2業種を二重に計上することはできず、各工事の経験割合で計算することになります。

B会社で経験した屋根工事と板金工事の割合が7:3であれば、B会社での屋根工事の経験年数は下記の計算から7年分ということになります。

(7÷10)×10年=7年

この場合には残り丸3年分の経験年数を、他社の経験で証明する必要があります。

次に、屋根工事と板金工事の経験割合7:3として一つの事業所に勤め続けた場合に、屋根工事の専任技術者になるために必要な経験年数を考えてみましょう。

10年÷(7÷10)≒14.3年

上記より、屋根工事業の営業所の専任技術者になるために必要な実務経験年数は14.3年ということになります。しかし、先述のように愛知県知事許可申請の場合「実務経験証明書」には1年(1月~12月)あたり1件の実績を記載する必要がありますので、記載が必要な工事実績は0.3年分を繰り上げて15年分、計15件ということになります。

このように、複数の業種の工事を請け負っている事業所での実務経験を使って営業所の専任技術者の申請をする場合は、単に勤務年数だけではなく、計算上で必要な実務経験年数を満たしているかについてしっかりと確認しましょう。

なお、愛知県知事許可申請の場合は、申請時に業務経験の割合をヒヤリングされます。

このヒヤリング結果は、その後に行う申請にも引き継がれます。後から行う申請時に整合性が取れないといったことがないように、初回申請時にしっかりと確認しておくことが重要です。

実務経験年数が足りるかどうか不安な方は、申請窓口で相談したり、ノウハウを持つ行政書士に相談することをおススメします。

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実務経験年数の計算方法の例外

①電気工事業、消防施設工事業の場合

電気工事業、消防施設工事業の営業所の専任技術者について、実務経験を使って申請する場合には、保有資格に関する注意点があります。

電気工事及び消防施設工事のうち、電気工事士免状、消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ直接従事できない工事に直接従事した経験については、電気工事士免状、消防設備士免状等の交付を受けた方等として従事した実務の経験に限り経験期間に算入することができる

引用:愛知県「建設業許可申請の手引 (申請手続編)」

作業者の立場で資格者証が必要な工事を資格者証の交付を受けずに施工した経験は、「実務経験証明書」に記載する実務経験としては認められないということです。

理屈上は、資格が無くても従事できる立場での実務経験であれば「実務経験証明書」に記載できるということでもありますが、電気工事や消防施設工事に関係する事業者に作業者として勤務する場合、電気工事士や消防設備士の資格を取得することが一般的ですので、あまり現実的ではないでしょう。

なお、電気工事業(一般建設業)については、第1種電気工事士免状交付者であれば実務経験なしで、第2種電気工事士免状交付者であれば交付後3年の実務経験で営業所の専任技術者になることができます。消防施設工事業については、甲種・乙種消防設備士免状交付者であれば実務経験なしで営業所の専任技術者になることができます。

建設業許可条件③-1営業所の「専任技術者」になれる資格一覧

②解体工事の場合

建設工事業が新設される前、平成28年(2016年)5月31日以前にとび・土工工事業として請け負った解体工事の実務経験は、平成28年(2016年)6月1日以降のとび土工工事業と解体工事業両方の実務経験年数として重複して計上できます。先ほど、同時に複数の業種を経験していた場合には経験期間を重複して計上できないと書きましたが、これはその例外です。

ただし、建設リサイクル法(正式名称:建設工事に係る資材の再資源化に関する法律)が施行された平成14年(2002年)5月30日以降の実務経験については、とび・土工工事業の許可を持つ建設工事業者か登録解体工事業者での経験以外は認められません。

実務経験年数の短縮が認められる場合(緩和措置)

技術的な共通性のある複数の業種の建設工事の経験がある場合について、経験業種の組み合わせによっては必要な年数が短縮される場合があります。

※「実務経験の緩和措置」と言います。

パターン A

※申請業種と技術的共通性のある業種

B

※申請業種

総合建設業と専門工事業の組み合わせ 土木工事業 とび・土工工事業、しゅんせつ工事業、水道施設工事業、解体工事業
建築工事業 大工工事業、屋根工事業、ガラス工事業、防水工事業、内装仕上工事業、熱絶縁工事業、解体工事業
専門工事業どうしの組み合わせ 大工工事業 内装仕上工事業
内装仕上工事業 大工工事業
とび・土工工事業 解体工事業
解体工事業 とび・土工工事業

 

下記の①と②の両方の条件(要件)を満たす場合に、B欄の建設工事業の営業所の専任技術者となることができます。

【条件】

  1. 表のA欄の経験期間と、B欄のうちのいずれか一つの経験期間を合わせて12年以上
  2. 該当のB欄の工事業の経験期間が8年以上

“実務年数の短縮”とはいうものの、計12年かかりますので、総経験年数としてみた場合の年数が減るわけではありません。

とはいえ、先ほどの「同時に複数の業種を経験していた場合」で考えると、総合建設業者での経験や、関係の深い2つの専門工事を請け負う専門工事業者での経験を証明する際にはメリットの大きい制度ということができます。

「実務経験証明書」のサンプル

先ほどの実務経験年数の計算方法の例に従い、屋根工事経験で愛知県知事許可申請をする場合の「実務経験証明書」のサンプルです。

【作成条件】

  • 申請する建設業の業種:屋根工事業
  • 営業所の専任技術者になる者:愛知建夫
  • 実務経験の証明者:アイリス建設(株)代表取締役 愛利須太郎 (愛知建夫の元勤務先の社長)
  • 証明する実務経験:屋根工事の経験(屋根工事と板金工事の経験割合7:3)

 

【注】記載方法等の子細につきましては、申請窓口へ問い合わせいただくか「申請の手引き」を参考にして頂くようお願いします。

①業種

営業所の専任技術者として証明する建設工事の種類を書きます。

②申請日

申請書を提出する日です。窓口へは空欄のまま持参し、実際に受付をしてもらう段階で日付を記載します。

③証明者

専任技術者になる方(本人)の実務経験を証明してくれる方の名前を書きます。

証明者は、原則として、経験期間当時に勤めていた事業所の代表者の方です。

  • 現在勤めている会社・事業所の代表者(等)
  • 過去に勤めていた会社・事業所の代表者(等)
  • 個人事業主としての経験の場合は、個人事業主本人
  • 勤めていた会社が倒産して代表者が行方不明等の場合は、本人の工事経歴を証明できる(知っている)建設業許可事業者の代表者(等)

現在の所属先ではなく、昔勤めていた会社の代表者の方等に証明してもらう場合は、工事台帳や工事実績データを借りたり、証明者となってもらうことを承諾してもらう必要がありますので、昔務めていた会社との関係が非常に重要です。特にこれから独立して建設業の許可を取りたい方は、現在の勤め先の方との関係や、退社の手続きの進め方に十分注意しましょう。

証明に際して、以前は証明者の方に押印してもらう必要がありましたが、現在は不要となっています。記載・記名は印刷でも構いませんが、トラブルを避けるために提出前に証明者の方に内容を確認してもらいましょう。トラブル防止のため、例えば別途同意書を頂くとか、名前だけ自筆してもらったりしても良いでしょう。

くれぐれも証明者に内緒で、勝手に出すようなことはやめてください(犯罪です)。

建設業許可等行政手続の押印(印鑑)廃止について

④「被証明者との関係」

証明者から見た場合の専任技術者との関係を書きます。現在の従業員だったら「使用人」、以前の従業員だったら「元使用人」等となります。

⑤技術者の氏名

専任技術者になる方の氏名を書きます。

⑥生年月日

専任技術者になる方の生年月日を書きます。

⑦使用された期間

証明者の会社・事業所で働いた総期間を記載します。

⑧使用者の商号又は名称

記載する実務経験を積んだ会社・事業所名を書きます。

通常は③の証明者の会社・事業所名と同じになりますが、所属会社の倒産等による第三者証明の場合は証明者欄と異なる場合もあります。

⑨職名

部署名がある場合は、当時の所属部署名を書きます。

部署名が無い場合は、当時の職名(代表取締役、事業主、現場作業者等)を書きます。

⑩実務経験の内容

申請する種類の建設工事について、営業所の専任技術者となる本人が関わった工事を記載します。

1年(1月~12月)のうちでの、主要工事を記載してください。

経験した工事の内容がわかる程度に具体的な記載(現場名―工事名称―建設工事の種類―経験した実務の内容等)が必要です。

現場名について、サンプルでは「○○邸」と書いてありますが、申請書には具体的な名称を記載してください。

※このサンプルでは、屋根工事と板金工事の経験割合を7:3として、1年1件×15年=計15件記載してあります。

⑪実務経験年数

⑩実務経験の内容に記載した工事に、実際に携わった期間を記載します。※総工期ではありません。

⑫証明を得ることができない場合はその理由

証明者となる人物が死亡・行方不明等の場合に、その理由を書きます。

⑬合計

⑦の使用された期間のうち、建設工事の実務に従事した総年数を記載します。

注)⑪の合計年数ではありません。

注)申請対象の種類以外の建設工事に携わっていた期間も含めて記載します。申請時に記載された年数のうち、どのくらいの割合を申請する業種の建設工事に携わっていたかをヒヤリングされますので、このサンプルの場合では「屋根工事と板金工事の経験割合7:3」と答えることになります。

添付書類

愛知県知事許可の場合、申請時に下記の書面を添付(提出又は提示)します。

  • ①学歴を証明する卒業証書(コピー)、卒業証明書(原本)
  • ②取得単位を証明する成績証明書等
  • ③「実務経験の内容」欄に記載した工事の内容が確認できる契約書(等)の証票書類
  • ④実務経験の緩和措置を使う場合は、申請業種と技術的共通性のある他業種の「実務経験証明書」

①は、学歴不問+実務経験年数10年以外のパターンで申請する場合に必要です。②は、①だけでは履修科目がわからない場合にのみ、提出を求められます。①②ともに、学歴に関する書面ですので、卒業した学校・大学等で発行してもらってください。

③は、「実務経験の内容」に記載した事項に疑義を持たれた場合等にのみ、役所から要求されます。窓口担当者の指示に従って用意してください。

④は、実務経験の緩和措置を使って、実務経験年数8年で申請する場合にのみ必要です。申請業種と技術的共通性のある業種(前掲表A)についても「実務経験証明書」を提出します。

記載した実務経験の内容に疑義等がなく、学歴不問+実務経験10年で申請するのであれば、愛知県知事許可申請の場合、提出する書類は「実務経験証明書」だけということになります。

特定建設業の営業所の専任技術者になるために必要な実務経験

特定建設業の営業所の専任技術者になるためには、下記①又は②のどちらかの条件(要件)を満たす必要があります。

  1. 指定された資格を有していること
  2. 一般建設業の営業所の専任技術者になるための条件(要件)をみたし、かつ、②「指導監督的実務経験」を有すること(※指定建設業を除く)。

1.について、一般建設業と同様、特定建設業の場合も、指定された資格を有していれば営業所の専任技術者になることができます。しかし、一般建設業に比べて難易度の高い資格(1級)が必要です。

特定建設業の営業所の専任技術者になるための資格一覧は、下記に纏めました。

建設業許可条件③-1営業所の「専任技術者」になれる資格一覧

2.について、もう少し詳しく説明していきます。

まず前提として、一般建設業の営業所の専任技術者になるための条件(要件)をみたしている必要があります。

つまり、特定建設業の営業所の専任技術者にはなれないけれども一般建設業の営業所の専任技術者にはなることの資格をもっているか、必要な実務経験があるかのどちらかです。

これにプラスして「指導監督的な実務経験」が必要になります。

「指導監督的な実務経験」とは?

「指導監督的な実務の経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいう。(中略)許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものに関し、2年以上の指導監督的な実務の経験が必要である

引用:「建設業許可事務ガイドラインについて」(令和3年12月9日国不建第361号)

「工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験」とあることから、一般作業者や、職人(一人親方)として専門工事のみを請け負った経験ではダメということですね。

実際に経験した建設工事の業種の経験に限られるのは一般建設業の場合と同じです。但し、下記の両方に該当する工事に限られます。

  • 元請業者での経験であること
  • 請負代金の額が4,500万円以上(※税込)であること(昭和59年(1984年)9月30日以前1,500万円以上、昭和59年(1984年)10月1日以降平成6年(1994年)12月27日以前3,000万円、平成6年(1994年)12月28日以降4,500万円)

許可を有している建設業者に所属して、かつ、ある程度規模の大きな元請工事を指揮した経験が求められますので、実務経験を積むこと自体が難しいと言えるでしょう。

必要な経験年数は2年ですが、後述のように、一般建設業の営業所の専任技術者に必要な実務経験年数と計算方法が異なります。

なお、指導監督的実務経験としての条件を満たしていれば、一般建設業の営業所の専任技術者になるための実務経験年数と重複計算することができます。

指定建設業の場合

指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、ほ装工事業、造園工事業)の場合は、指導監督的実務経験で特定建設業の営業所の専任技術者になることは認められていません。

従って、指定建設業の特定建設業の許可を取りたい場合は、必ず資格者から営業所の専任技術者を選任する必要があります。

建設業許可条件③-1営業所の「専任技術者」になれる資格一覧

指導的実務経験年数の計算方法

先述の通り、特定建設業の営業所の専任技術者になるための実務経験年数は2年です。

この2年ですが、一般建設業の場合と異なり、申請する業種の個々の工事の実働期間(従事した期間)の積み上げ実年数(重複計上不可)です。

あくまで当該工事に従事した実働年数が問われますので、件数は問題になりません。

前述のように、指定建設業では指導監督的実務経験での申請は認められていません。2年は短いように感じますが、指定建設業以外の専門工事で、指導監督的実務経験として認められる2つの条件(元請工事・請負額4,500万円(税込)以上)を満たす工事の実働期間として考えると、決して低くないハードルと言えます。

指導監督的実務経験証明書の書き方(愛知県知事許可申請の場合)

一般建設業の場合の実務経験同様、特定建設業の許可申請の際には、営業所の専任技術者になる方が必要な指導監督的実務経験年数を満たしているかについて証明する必要がありますので、「指導監督的実務経験証明書」という書面を作成して提出します。

※書き方子細については、申請となる役所が発行している「手引き」や申請窓口にて確認、相談してください。

「指導監督的実務経験証明書」のサンプル

ここでは愛知県知事許可申請の場合の「指導監督的実務経験証明書」の書き方を紹介します。

【作成条件】

  • 申請する建設業の業種:しゅんせつ工事業
  • 営業所の専任技術者になる者:愛知建夫
  • 実務経験の証明者:代表取締役 愛利須太郎 (愛知建夫の勤務先の社長)

【注】記載方法等の子細につきましては、申請窓口へ問い合わせいただくか「申請の手引き」を参考にして頂くようお願いします。

実務経験証明書 特定

①業種
②申請日
③証明者
④被証明者との関係
⑤技術者の氏名
⑥生年月日
⑦使用された期間
⑧使用者の商号又は名称

一般建設業の「実務経験証明書」の記載例に同じです。

⑨発注者名

指導監督的実務経験として認められる工事は元請として請け負った工事に限られますので、この欄の記載は必ず工事の発注者の名前になります。

⑩請負代金の額

指導監督的実務経験として認められる工事は請負金額4,500万円以上(税込 ※令和4年(2022年)5月1日現在)に限られますので、この欄の額も、必ずそれ以上になります。

⑪職名

⑫職務経験内容に記載する工事での職名を書きます。指導監督的実務経験であるので、管理監督者としての職名である必要があります。

⑫実務経験の内容
⑬実務経験年数
⑭証明を得ることができない場合はその理由

一般建設業の「実務経験証明書」の記載例に同じです。

⑭合計

⑬実務経験年数に記載した期間の合計期間を記載します。片落ち(※初月又は終月を除く)で計算してください。

この合計期間が2年以上になる必要があります。

添付書類
  • ①一般建設業の営業所の専任技術者の条件(要件)に関する申請書類一式
  • ②実務経験内容欄に記載した工事内容の確認ができる契約書(原本)又は注文書&請書(ともに原本)

①は、特定建設業の営業所の専任技術者になる前提条件として、一般建設業の営業所の専任技術者の条件(要件)を満たしていることが必要なため、その証明のために提出します。

②は、実務経験として記載した内容が事実であるかどうかを確認されます。当記事執筆時点(※令和4年(2022年)5月1日現在)では、契約書(原本)か、注文書と請書のセット(ともに原本)以外の確認書類は認められていません

監理技術者資格者証による実務経験/指導監督的実務経験の証明

特定建設業の許可が必要となる工事(元請として請け負った工事で下請業者への発注額が4,000万円(建築一式工事:6,000万円)以上となる工事 ※ともに税込)を施工する際には、工事現場に配置する技術者として「監理技術者」を置く必要があります。

監理技術者として認められる条件は、特定建設業の営業所の専任技術者と同じです。

また、公共性のある工作物に関係する建設工事で請負金額3,500万円(建築一式工事:7,000万円以上)(税込)となる場合には、監理技術者はその工事現場に専任である必要があります(※)。同じ「専任」という言葉ですが、営業所の専任技術者とは全く違う制度ですので、混同しないようしましょう。

※複数の工事現場に監理技術者補佐を置く、「特例監理技術者制度」を使う場合を除きます。

この工事現場に専任で配置する管理技術者は、「監理技術者資格者証」を携帯しなければなりません。

一般建設業・特定建設業ともに、この「監理技術者資格者証」のコピーを申請書に添付することで、営業所の専任技術者になるための資格者証や実務経験証明書の添付が不要になります。

規則第3条第2項第4号又は規則第13条第2項第4号(監理技術者資格者証の写し)により、法7条第2号又は法15条第2号の基準を満たすことを証明する場合には、学校の卒業証明書、(略)実務経験証明書、(略)指導監督的実務経験証明書又は(略)技術検定の合格証明書等の提出は要しない。その際「監理技術者資格者証」の有効期限が切れているものであっても「資格」や「実務経験」は認めるものとする。

引用:「建設業許可事務ガイドラインについて」(令和3年12月9日国不建第361号)

この監理技術者資格者証を利用した建設業許可申請のメリットとして、

  • ①申請書の作成工数の削減
  • ②実務経験申請による場合は、契約書等実務経験確認書類が不要となる。
  • ③有効期限が切れた「監理技術者資格者証」であっても、証明書類としては認められる。

①は、端的に書類作成のための時間の短縮です。

②③関してですが、実務経験証明による申請の場合、実務経験を積んでから期間が経過してしまうと、経験当時の記録や資料が紛失している可能性が高くなります。仮に保管してあるとしても、古い資料を探し出すのは非常に手間がかかります。

このような事態を避けるためにも、条件(要件)を満たした時点で「監理技術者資格者証」を取得しておくのは非常に有効です。

営業所の専任技術者になるための条件(要件)を証明する書類としての利用に限られますが、期限が切れていても証明書類として使えるということもポイントです。有効期限が切れたとしても、捨てずに保管するようにしましょう。

なお、「監理技術者資格者証」の発行は、一般財団法人建設業技術者センターが行っています。

WEBサイト:https://www.cezaidan.or.jp/index.html

まとめ

営業所の専任技術者になるための実務経験ですが、建設業に関係するどのような経験でもよいわけではありません。過去の経験内容次第では、いざというときに必要な経験年数を満たさないということも起こりかねません。

許可申請に際しては、営業所の専任技術者になる方の経歴をしっかりと確認しましょう。

【資料】所定学科一覧

土木工事業 / 舗装工事業

下記に関する学科

  • 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。以下同じ。)
  • 都市工学
  • 衛生工学
  • 交通工学

建築工事業 / 大工工事業 / ガラス工事業 / 内装仕上工事業

下記に関する学科

  • 建築学
  • 都市工学に関する学科

左官工事業 / とび・土工工事業 / 石工事業 / 屋根工事業 / タイル・れんが・ブロック工事業 / 塗装工事業 / 解体工事業

下記に関する学科

  • 土木工学
  • 建築学

電気工事業 / 電気通信工事業

下記に関する学科

  • 電気工学
  • 電気通信工学

管工事業 / 水道施設工事業 / 清掃施設工事業

下記に関する学科

  • 土木工学
  • 建築学
  • 機械工学
  • 都市工学
  • 衛生工学に関する学科

鋼構造物工事業 / 鉄筋工事業

下記に関する学科

  • 土木工学
  • 建築学
  • 機械工学

しゅんせつ工事業

下記に関する学科

  • 土木工学
  • 機械工学

板金工事業

下記に関する学科

  • 建築学
  • 機械工学

防水工事業

下記に関する学科

  • 土木工学
  • 建築学

機械器具設置工事業 / 消防施設工事業

下記に関する学科

  • 建築学
  • 機械工学
  • 電気工学

熱絶縁工事業

下記に関する学科

  • 土木工学
  • 建築学
  • 機械工学

造園工事業

下記に関する学科

  • 土木工学
  • 建築学
  • 都市工学
  • 林学

さく井工事業

下記に関する学科

  • 土木工学
  • 鉱山学
  • 機械工学
  • 衛生工学

建具工事業

下記に関する学科

  • 建築学
  • 機械工学

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